漂流するトモダチ
20-05-19-07:55-
『漂流するトモダチ』副題=アメリカの被爆裁判 著者=田井中雅人・エィミ ツジモト 発行=朝日新聞出版2018年 kindle版 紙本で161頁¥1188 ASINB079ZJP96B
著者=たいなかまさと 朝日新聞・核と人類取材センター記者。著書『核に縛られる日本』ほか
エィミ・ツジモト アメリカ在住のジャーナリスト
内容=ノンフィクション。2011・3・11.この時、西太平洋を航行中だったアメリカの原子力空母、ロナルド・レーガンは、急遽、福島へ進路を変更し、救助支援に当たった。これが「トモダチ作戦」と言われる活動だったが、その後のことは知らされていないが、9名の死者を数え、400名以上の被害者たちが原告として訴訟を起こしている。
感想=あの時の「トモダチ」。
福島へ急遽駆けつけてくれたアメリカの原子力空母ロナルド・レーガン。乗組員5000人の巨艦だ。一つの街の規模で、映画館、レストランなどの他に警察、刑務所もある。
「オペレーション・トモダチ」に参加したのは空母レーガンだけではなかった、他に25隻の艦船、航空機も駆けつけてくれて、約1万7千人の兵士らが助けてくれたのだと、この本によって初めて知った。
ヘリの往復で届けてくれていた救援物資は、艦内の兵士たちのための食料であり、衣類であり水だった。
第1章では、この発端から始まり、放射性プルームに汚染した空母が退避するが、時すでに遅く乗務員たちは被爆。
次第に病状は進み、死者9人を数える現状が語られる。
第2章では、被爆して苦しむトモダチ4人へのインタビュー。
これは、読むのも辛い有様だ。彼らの肉声が聞こえる。
第3章は、小泉純一郎元首相との面会の時の、詳細なやりとりの記録。
ヨウ素剤を服用しないのに、下船の際に服用したと署名しろと強要されたことなども語られる。
「東電もアメリカ海軍もメディアも、何かを隠している」
という小見出しの項を読むと、組織が個人に対してどれほど冷淡・残酷であるかが身にしみる。
小泉元首相は10人の元兵士と面会したのち、記者たちの質問を受けている。
首相時代は原発推進の方針であった小泉元首相は目頭を押さえ、そして言った、「これは、原発反対論者も、原発推進論者も、病に苦しむ兵士に何ができるか、共同で考えることだと思っています。これは人道上の問題だと思っています」。
第4章で被爆の実態が記される。
第5章で再びインタビュー。
ここまで読み進んできて、溌剌とした青年たちが突然受けた被爆の苦しみ、迫る死の恐怖と悲しみ、希望を断ち切られた現在が迫る。
現役女性士官も訴訟に参加する。訴訟に参加するまでに至る気持ちと事情は痛ましすぎる。
最後の第6章は、裁判のこれからの展望。
この裁判、開廷希望日は2019年5月!
心を一つにしたい。
余りにも悲惨な現実だ、親切心いっぱいで助けてくれたトモダチが、こんなことに。この事を知りましょう。
著者=たいなかまさと 朝日新聞・核と人類取材センター記者。著書『核に縛られる日本』ほか
エィミ・ツジモト アメリカ在住のジャーナリスト
内容=ノンフィクション。2011・3・11.この時、西太平洋を航行中だったアメリカの原子力空母、ロナルド・レーガンは、急遽、福島へ進路を変更し、救助支援に当たった。これが「トモダチ作戦」と言われる活動だったが、その後のことは知らされていないが、9名の死者を数え、400名以上の被害者たちが原告として訴訟を起こしている。
感想=あの時の「トモダチ」。
福島へ急遽駆けつけてくれたアメリカの原子力空母ロナルド・レーガン。乗組員5000人の巨艦だ。一つの街の規模で、映画館、レストランなどの他に警察、刑務所もある。
「オペレーション・トモダチ」に参加したのは空母レーガンだけではなかった、他に25隻の艦船、航空機も駆けつけてくれて、約1万7千人の兵士らが助けてくれたのだと、この本によって初めて知った。
ヘリの往復で届けてくれていた救援物資は、艦内の兵士たちのための食料であり、衣類であり水だった。
第1章では、この発端から始まり、放射性プルームに汚染した空母が退避するが、時すでに遅く乗務員たちは被爆。
次第に病状は進み、死者9人を数える現状が語られる。
第2章では、被爆して苦しむトモダチ4人へのインタビュー。
これは、読むのも辛い有様だ。彼らの肉声が聞こえる。
第3章は、小泉純一郎元首相との面会の時の、詳細なやりとりの記録。
ヨウ素剤を服用しないのに、下船の際に服用したと署名しろと強要されたことなども語られる。
「東電もアメリカ海軍もメディアも、何かを隠している」
という小見出しの項を読むと、組織が個人に対してどれほど冷淡・残酷であるかが身にしみる。
小泉元首相は10人の元兵士と面会したのち、記者たちの質問を受けている。
首相時代は原発推進の方針であった小泉元首相は目頭を押さえ、そして言った、「これは、原発反対論者も、原発推進論者も、病に苦しむ兵士に何ができるか、共同で考えることだと思っています。これは人道上の問題だと思っています」。
第4章で被爆の実態が記される。
第5章で再びインタビュー。
ここまで読み進んできて、溌剌とした青年たちが突然受けた被爆の苦しみ、迫る死の恐怖と悲しみ、希望を断ち切られた現在が迫る。
現役女性士官も訴訟に参加する。訴訟に参加するまでに至る気持ちと事情は痛ましすぎる。
最後の第6章は、裁判のこれからの展望。
この裁判、開廷希望日は2019年5月!
心を一つにしたい。
余りにも悲惨な現実だ、親切心いっぱいで助けてくれたトモダチが、こんなことに。この事を知りましょう。