文房 夢類
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葛きり

梅雨のうちとも思えぬ暑さ。葛きりを冷やして楽しんだ。蜜の小袋がセットになっている簡単なもの。食べ終わってから、なんかヘン、なんか違うなあと後味を吟味したが、全く自信がなくなっている昨今である。好物を味わっても、昔はもっと美味しかった、とか、こんなじゃない、とか感じてしまうのだ。これは自分の舌が変化したに違いないことで、文句を言っても仕方がない。
包装のポリ袋を片付けて、ふと裏面を読んだ。原料=こんにゃく。え”!である。葛きりはこんにゃくだったのか。100%こんにゃくだと!
なんと私はこんにゃくに甘い蜜をかけて食べたのだ。こんにゃくならこんにゃくと書け! 刺身こんにゃくは好きだけれど、葛だとごまかされて食べたとは興ざめも甚だしい。冷え切った怒りに沈んだ。
深夜になっても怒りは収まらず、友人にメールで訴えた。
彼女も最近、似たような経験をしていた。わらび餅の原料が100%タピオカだったそうだ。他の名前で言い切るところが不敵だ、とメールが返ってきた。
私たちはこのあと、片栗粉について語り合った。片栗粉の原料は馬鈴薯の澱粉で、本物のカタクリの根ではない。このことは以前から知っていた。カタクリは今、季節の花として鑑賞の対象であって、根を使って片栗粉を量産するほどはない。わらび餅も葛きりも、料理法だけ受け継がれて生産され、名前だけ付けているのかもしれない。探したらまだ出てきそうだ。しかし、今もしっかりと作っている吉野の本葛の味を思うと、うなだれるしかない。
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