文房 夢類
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波状攻撃を受ける人々

新型コロナウイルスは、当初より予測されていたように、波のように緩急をつけながら襲ってきている。今は第三波なのだという。寒さはウイルスの敵ではないらしく、夏よりも長生きするともいう。
日々の暮らしを守りつつも、守りきれずに仕事を失い、途方にくれる人々が次第に増えてゆく様相を、暗澹としつつ思いやるも、なす術もないのである。
私の母の母は28歳という若さで3人の幼児を残して亡くなった。肺炎にかかって突然亡くなってしまったと聞いていたが、スペイン風邪にかかったのではないか、そうに違いないと年代を指折り数え、思い起こしている。
疾風の如く襲いかかり、老いたもの、弱き者たちからなぎ倒してゆく様は、春一番と呼ばれる早春の疾風、木枯らしという初冬の強風に似ている。
山野の樹木たちにとっては、春一番も木枯らしも、枯れ枝や病葉を一掃してくれる益風でもあるのだが、疫病は、生き物すべてにとって恐怖で覆い尽くしつつ命を奪い去る害毒以外の何物でもない。
グスターフ・シュバープが記したギリシャ・ローマ神話の、ごく初めのあたりにゼウスが人間を作る話がある。最初に黄金で作った人間、黄金族は、穏やかに消滅し地上の守護神、正義の保護者となる。次にゼウスは銀で人間を作った。この銀族は傲慢で神を崇拝しなかったので滅ぼしたが、魔人として地上をさまよう許可を与えた。ゼウスが三番目に作ったのが銅製の人間で、これは巨大で残忍、暴力的で肉食を好んだ。当時は鉄がない時代であったから銅製の農具で畑を耕していたという。この恐るべき種族はゼウスによって滅ぼされたのではなかった、黒死病によって滅ぼされて冥府の闇に沈むのである。
世界中に散在する言い伝えの中に洪水伝説があり、そして疫病がある。原始、まだ文字もない時代から人のそばをうろついていたんだなあ、と改めて思う。
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