文房 夢類
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春よ来い

町中の暮らしで、身の回りに生き物がいること。これほど在りがたいことはない。とは言っても、我が儘、身勝手であるから、ゴキブリやダニは受けつけない。目をかけているのは、猫の富士、室内水槽のコリドラス1匹、庭の元梅干しの壷にいるメダカたち、それに自力で冬ごもりをしているヤモリとトカゲたち。3.11のとき、水槽の水が大揺れに揺れて60㎝の深さ一杯に入れてあった水が半分以下に減ってしまった、これを機会に今は20㎝ほどの水深にしてヒーターを取り外し、外気と同じ温度で我慢して貰っている。以前は家族一群となって住んでいたのが、たった1匹になって何年にもなる。寒かろう、とストーブに置いているヤカンの湯を入れてやる。同じ時間に同じ場所で湯が来るのを待っている。小さな眼を動かして私の動きを見ている。この孤老のために、春よ、早く来いと願ってしまう。メダカたちは深い壷の底に土を入れて、表面は砂にし、凹凸のある石を置いている。日差しのある日は現れて、氷の張る日は隠れている。居心地良くしているな、と見回ると満ち満ちた心地になる。
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