文房 夢類
文房 夢類
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カラスウリ

雑木林の中に、朱色の実を見つけたときの感激。それを手元に置きたくてカラスウリの実を取り、いやもう、場所が場所だから苦労して手に入れたのだ。朱色の実を破ると糸巻きの形の種がたくさん並んでいる。この種を蒔いて育てて何年も経った。花が咲いた。幻想的な深夜の大輪は息を呑む妖艶さである。夜明けが近づくと白い糸くずに姿を変えてしまうので、夢かと感ずるほどだ。朱い実が実るのを何年も待った。実らぬ不思議を調べたら雌雄異種だった。ああ。雄だったのだ。でもまあ、縁あってウチの庭にいるんだもんね、と年々太く大きく育つ芋根を大事にしてきた。この芋の澱粉を精製したものが「天花粉」と呼ばれるベビーパウダーである。
ところが。伸びるのである。ぐんぐん育つのである。根の芋が大きくなったので力がついてしまい、猛烈な勢いで四方八方に進んで行く。しかも土の上を這うと、茎のどこからでも根が出て、新たな繁殖を始めるのだ。この夏は、庭の思いも寄らない遠くからカラスウリの葉と蔓が現れたので、本体をあんどん作りにして逃げないように囲い、あちこちに現れた芽には熱湯を掛けてまわり撲滅した。
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