文房 夢類
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ふるさとを見下ろす

五月晴れの朝、新宿方面へ行く用事のついでに都庁展望室へ寄った。
いつでも来られると思ううちに、一度も行ったことがない、となりそうなので思い立った。
新宿駅から動く歩道に乗り、決して歩かず、並行して歩く人々や店を見物する。まるでお上りさんだが、この界隈の変化は見ものであるというわけだ。
都庁に入ると、いきなり長い行列が伸びていた。観察するにガイジンの群れのようである、しかしこれが目的の展望台への行列だったのだ。
HPで調べてこなかったので仕方がない、並んでいる人に声をかけたら40分待ちだという。
やがて正午を過ぎてしまい、都庁で働く人々が昼食のために出てきた、これを眺めるのも興味深いことで、都庁で働きたいと希望して働いている人々の特徴を集約してみる。
浮いてしまう人種は、最初から参加をやめたほうが良いのだ、集団には参加する前に自分自身を見極めないと苦しむことになる。相手の組織がいけないのではない、自分自身の性根から浮遊した希望を持つことが間違いなのだ。

12人乗り2基のエレベーターが45階の展望室までピストン輸送をしていた。
エレベーターに乗る前に荷物のセキュリティ検査があり、これはいつも行われているものであるか、それともトランプ大統領来日に備えてのことかはわからない。
展望室のガラス越しに見物した。地上202メートルからの眺めは、期待通りの五月晴れ、素晴らしいものだった。はるか遠くに富士山、丹沢山系。目の下には高層ビルが林立して、それぞれデザインを誇るかのようだ。
スカイツリーが見えた、特徴のある網目模様のモード学園、新宿センタービル、KDDI、国立競技場、明治神宮、オペラシティ。あれも見えた、これも知ってる。
右往左往して大喜びだが、外国から訪れた人々は、それそれの建物と結びつく糸口がないから全体を眺めて、すぐに終わりだ。
年配の男性が背後から英語で話しかけてくれたので振り向いたらボランティアの人だった。
ボランティアの味はいかがですか。
展望室へ上がるためには40分も待つが、いったん上がってしまえば好きなだけいられるという。話しているうちに仲間のボランティアの人も寄ってきて楽しい輪ができた。
みなさん70代だという、月に1回来る人、2回の人と、いろいろで、他の日は地域の子どもたちの世話をしている人もいた。
この展望室にくる8割の人が外国からの観光の人だそうで、日に3000人。若い時に海外で仕事をしてきた経験を生かして、この展望室に来ているのですよ、とも話してくださった。
最近はQRコードで詳細な情報を読み取ることができるために、ここは「忙しくない」そうだ。いやもう地元は忙しくて、と初耳な話も聞かせてもらった。

ひとしきりして再び見下ろす新宿。あっちの方向に淀橋浄水場があった、その向こうが柏木の淀橋病院。今は東京医大というけれど。
ここで、あたしの子どもが生まれたんだ。その先、成子坂の方へ歩いていったところで生まれたんだ、私は。
高層ビル群が霞んできて灰色一面の焼野原が浮き上がり、それもたちまち消えて木造平屋の家々が並ぶ、地形が露わに見える武蔵野の台地が地平線の果てまで伸びていった。
ふるさとを見下ろす空は五月晴れ

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