文房 夢類
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ビオトープのメダカ

昨夏、庭の隅に作った畳1畳ほどのビオトープに、仔メダカを入れたまま冬を越そうとした。メダカの親たちは2つの常滑焼の壺にいて、この壺は片口まで土に埋まり、さらに壺中の半分は土と砂を入れてある。メダカは土が好きで、潜って冬を越す。仔たちを壺に入れることも考えたが、これは考えるまでもなくやめた。その訳は、親メダカの餌になってしまうのがわかっているから。
ビオトープの深さは3センチで、本来なら泥が底にある自然の水たまりのはずだけれど、手製のビオだから底面は防水性セメントにしてある。
土木工事大好きなのだけれど、車を降りた時点で大工婆と土木婆は断念せざるをえないと気落ちしていた。資材を買い、運ぶ手段がないからだ。しかし世の中は良くしたもので、ネット発注で即配達してくれる店が現れたのである。防水、速乾、なんでもござれである。というわけで前にも増して気が大きくなった。
この冬は、なぜか特別寒かった。こんな冬は滅多にあるものではない。雨樋の下に水桶を置いて雨水を貯めているのだが、これが凍った。いつもの冬なら、指で突けば割れるものが動かない。それで柄杓で叩いた。なんと柄杓が割れてしまい、氷はビクともしなかったのだ。割れた柄杓を手に、ハッとしてビオトープに駆けつけた、のではない、どっこいしょ、よいとこしょと、滑って転ばぬように移動したのであったが、案の定、凍結していた。ああ。
しかし私は安心していた。というのは三分の一くらいは上に覆いをかけていたからだ。ところが、である。覆いの下も凍っていた。「カエルの足跡」と呼んでいる水草の丸い葉が氷の中にはまって動かない。
手をつき膝をつき、氷の中を仔細に見て回った。わかったことは、3センチの深さ全部が凍りついたことだ。15ミリから30ミリサイズのメダカたちは。
この大事件があったのは、今から何日も前のことである。以来今日まで私は、毎日新しい水を注ぎ、なんと餌まで振り入れて膝をついた。昼の気温が10度を超えた昨日は、親メダカが水面に出てきていた。ダメだった仔メダカたち。
宙を睨んで決心した、この春、もう一度工事をするぞ。しかし自然とはなんだろう? アマゾン原産だという「カエルの足跡」は生きていた。緑色の丸い葉っぱが光っている。
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