文房 夢類
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常夜灯

先頃から24時間営業のコンビニの営業時間を短縮するという話題が出ている。賛否両論、双方ともにうなづける理由がたくさんあるようだが、私は交番との関係を思っている。
最近、目に見えて交番の数が減ってきている。自然に消滅するわけではない、減らす方針だから減るのである。
たとえば神奈川県警では、2020年度から10年間で県内470カ所ある交番を約400交番に減らす計画がまとまった。しかし交番勤務の人数は減らさない方針だという。
減らす理由は、いつもいない交番という状態をなくして、一交番当たりの体制を充実させる方針のためだそうだ。
わかるなあ、と思う。警官だって危険な目に遭う。いや一般人より確率が高いだろうことは容易に想像できる世の中だ。
それは充分にうなづけるが、結果として交番の数が減るのである、今よりも、もーっと減るのである。交番が「すぐそこ」には見当たらなくなる。探すよりも本署に駆け込んだ方が早くなるかも。
今までだって多いとは言えなかった交番の代わりに明るさを提供してくれてきたのがコンビニだった。コンビニなら「すぐそこ」にみつかる。

午前1時から午前3時は人の動きは少ない。車の動きが一瞬、ふっと止まる時間帯が午前3時。コンビニは、この時間帯にも年中毎日、明かりを分け与えてくれてきた。町々の常夜灯。
この常夜灯が人々に、どれほど大きな安心をもたらしてくれてきたことか。安らかに眠る人々は気づかないだろうが、防犯の第一は明るくすること、なのだ。
「すぐそこ」にある交番は、明るく在ることで防犯の最初の一歩を確保してくれていた。これが減りつつある流れの中で、意図しなかっただろうが24時間営業のコンビニが助けてくれてきた。
実はもう一つ、24時間電灯をつけているところがある。これは公衆電話ボックスだが、すでに探すのも一苦労。使い方を知らない年代が増えているから、これも、もっと減るだろう。
個人住宅が設置する防犯灯は、検知したときだけ点灯して消える機能のものが多い。
交番が減り電話ボックスも減り、24時間営業の店舗も減ってゆく町は、獰猛な肉食魚がうごめく深海のようになるかもしれない。かもじゃない、なるはずだ。
人間という動物は恐怖に駆られて逃げるときに光に向かう習性を持つ。闇に向かって逃げるのはミミズだ。常夜灯は、だからあったのだ、昔から。
こんなことを案ずるのは、車の一人旅で、灯りを慕い駐車した午前3時を思いだす故だろう。
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