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トンボ、空へ

去年完成したビオトープが安定した姿を見せはじめた。
アワビの貝殻や、石ころ、タイルで作ったトンネル、お土産の釜飯のお釜を横向きに置いたものなど、メダカのお家をたくさん作って冬を越した。
冬の間に助かるでしょうと用意したのだが、今も隠れ家として便利に使われている。
ところがこれも良し悪しで、餌をやり、眺めようと寄って行くと、足音を察知して矢のように素早く隠れてしまう。彼らは耳で聞くのではない、胴体の側線で感知する。
畳1畳程度の浅い水にいるメダカは、水槽のメダカとは別種のメダカになってしまった。とにかく群れる、早い、隠れる、慣れない。可愛さなんて、ない。
底に敷いた砂の上に、冬の間に堆積した枯葉やゴミに混じって、脱皮したヤゴの抜け殻がたくさん漂っているのを見つけた。
トンボの幼虫ヤゴは、何度も脱皮を繰り返して成虫になる。越冬した大きなヤゴもたくさんいて、寒さには、猛烈強い。
このヤゴは、メダカにとって天敵と言われるほど獰猛な肉食系だから、メダカは命がけで暮らしている。
ビオトープにした以上、小型ながらも弱肉強食の自然界が形成されたのだから、見守る側は、我慢しなければならない場面に出会うことは避けられない。
ボウフラなんて、食われてしまって皆無だし、メダカの卵が孵化しても、親メダカは平然と食べてしまうし、ヤゴは想像もできないほどの速さでメダカを捕食する。
けしからん、とヤゴを撲滅したらビオトープは成り立たない。対抗手段はメダカの卵を保護して数を増やすことか、と思案する。
こうした日々が続き、やがてヤゴが、濃灰色の6本足の怪獣風の虫が、水から這い出て羽化する季節になった。
トンボは夜中から明け方にかけて羽化し、朝日を受けて羽がきらめく。晴れて微風がある恵まれた日に旅立つトンボは幸せだ。朝6時には青空へ飛び立ってゆく。梅雨時の曇りの日には、羽が伸びて乾くまでに相当時間がかかり、8時過ぎまで動けない。
トンボの一生の中で最も無防備な羽化のあいだ、高齢の猫、マルオは無関心だから安心していられるが、好奇心いっぱいの富士に見つかったら最後だ。9月のお彼岸の頃までは、空へ旅立つトンボたちを見届けてから富士を庭に出してやることになる。
やがてトンボは蚊などの小虫を捕食して、産卵のために水辺に戻ってくるが、空へ出発したトンボたちは、のびのびとして安全かというと、ここもまた緊張の世界だ。
蚊にとっては恐ろしいトンボだが、鳥たちにとっては、格好の餌食だ。
生き物が生き延びて、さらに次世代を作るということが、どれほど大変なことか。並大抵ではない、気が遠くなるほど大変なことなのだ。
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