文房 夢類
文房 夢類
myExtraContent1
myExtraContent5

都知事選挙

参院選に続き、都知事の選挙。私は元都民なので見物人。浮動票が大半を占め、これが決定打となるという。
江戸の昔から、各地から寄り合った人々が造り上げてきた街である。犇めく屋号は近江屋、越後屋、三河屋、伊勢屋、駿河屋などなどあった、今に残る名もある。代を重ねるにつれて親しみが根づくありさまは大都会ならではの様相で、列島各地の、その土地に産まれ、その土地で死ぬ住民とは異質のものだろう。
転勤で東京に来た人、3月に大学に合格した若者たちのような新都民も多いが、住民票を移して3日も経てば一見、見分けがつかない立派な都民だ。しかし選挙となると、その心はどんなものだろう。傍観者であり、部外者であり、他所者でありはしないか。
私は都内からはみ出して、余儀なく隣県に住んでいるが、傍観者ではない、無関係な気持ちになれない、自分の故郷そのものであるから、我がこととして東京を案じながら都知事選を見守っている。選挙権がなくとも、自分の故郷の一大事である。
流動的に東京に住む「都民」の全員とは思いもしないが、故郷を大切に感じている各地出身の人たちにとって、都知事選はどういう意味を持っているのか、知りたいと思う。
テレビ画面で「よく知ってる」顔に投票してしまうのも、もしかして故郷のテレビで見ていた顔だったから、ではないか? 東京の有名どころをたくさん見聞きし、味わい、見かけも言葉も最先端の、いわゆる「東京もん」となって故郷へ帰ったとき、一瞬にして都会の衣を脱ぎ捨てた土地顔に立ち返り、抱き合い馴染む姿を目にすると、故郷の底力にのけぞる思いがするのである。
myExtraContent7
myExtraContent8