富士猫の話 #1 命名
04-11-14 09:47
自分の予定には、まったくなかったことだった。何がって、猫と暮らすことだ。私は子どもの時から犬と一緒だったが、猫は親戚の家にさえ、いなかったのだ。猫はのらねこ。のらねこはいたずら者。猫というものとは疎遠であり、なぜか知らぬが私の姿を見ると、隠れるか逃げるかするのだから、猫も私を避けているのがわかる。ということは、お互いに虫が好かん、のである。少なくとも私は、そう決めつけていた。
紆余曲折があったが、猫と二人で、二人というのはおかしいが、一人と一匹では決してない、私たちは、ふたりで暮らし始めたのだ。およそ百日児くらいの雌猫を、私は「富士」と名付けた。山中湖畔から眺める富士山の富士を思い、名付けた名である。この猫は、アメリカン・ショートヘアという種類で、黒白のシマシマ猫だ。
そんなことは、実はどうでもよい、無地でも水玉でも見ればわかるし、それだけのことだ。しかし、腰が抜けるほど驚いたことは、富士が活発な猫だ、ということだった。
テーブルに飛び上がる。ふわり、と身軽にあがってくる。飛び降りる。どさっ、という音がすると思うでしょう、音なしである。こんな程度の日々は、あっという間に過ぎ去った、今の話をしましょう。1歳半になった富士は、台所の食器棚のガラス戸が開いている、とみると、上の段に両手を引っかけて覗いているのだ。空のお皿しか入っていないけれど、なにかな? と見たいのだ。脚は宙ぶらりんだ。テーブルの四方に椅子がある。富士がイスの背に立っている。幅が3センチもないところに立っているから、器用だなあと見ていたら、いきなりペンダントライトの笠に飛びついた。両手でぶら下がり、長い胴体と長い脚、それよりも、もっと長いシッポが揺れている。大揺れのブランコだ。パンケーキとジャム、サラダがあるテーブルの上のランプである。コーヒーも淹れてある。その真上である。額の縁にぶら下がる、飛び上がった棚に花瓶があり、あらら、ガチャン、と落ちたのを見下ろしている。
この1年、我慢をして口を閉じていたが、富士猫の話をUPすることにします。
紆余曲折があったが、猫と二人で、二人というのはおかしいが、一人と一匹では決してない、私たちは、ふたりで暮らし始めたのだ。およそ百日児くらいの雌猫を、私は「富士」と名付けた。山中湖畔から眺める富士山の富士を思い、名付けた名である。この猫は、アメリカン・ショートヘアという種類で、黒白のシマシマ猫だ。
そんなことは、実はどうでもよい、無地でも水玉でも見ればわかるし、それだけのことだ。しかし、腰が抜けるほど驚いたことは、富士が活発な猫だ、ということだった。
テーブルに飛び上がる。ふわり、と身軽にあがってくる。飛び降りる。どさっ、という音がすると思うでしょう、音なしである。こんな程度の日々は、あっという間に過ぎ去った、今の話をしましょう。1歳半になった富士は、台所の食器棚のガラス戸が開いている、とみると、上の段に両手を引っかけて覗いているのだ。空のお皿しか入っていないけれど、なにかな? と見たいのだ。脚は宙ぶらりんだ。テーブルの四方に椅子がある。富士がイスの背に立っている。幅が3センチもないところに立っているから、器用だなあと見ていたら、いきなりペンダントライトの笠に飛びついた。両手でぶら下がり、長い胴体と長い脚、それよりも、もっと長いシッポが揺れている。大揺れのブランコだ。パンケーキとジャム、サラダがあるテーブルの上のランプである。コーヒーも淹れてある。その真上である。額の縁にぶら下がる、飛び上がった棚に花瓶があり、あらら、ガチャン、と落ちたのを見下ろしている。
この1年、我慢をして口を閉じていたが、富士猫の話をUPすることにします。