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蟻地獄

ソメイヨシノが満開、球根の草花が足元に咲き誇り、春に埋もれた。先立って咲いた彼岸桜、レンギョウ、ボケから、息つくまもない花の日々である。
ここ2、3年のことだが、通りかかるたびにチェックしている虫がいる。気候が良くなりアリも歩き回っているので、昨日立ち寄った。それは大きな建物の軒下の乾いた場所で、本来は草花でも植えておこうかと用意したのだろうが、乾いた土だけの細長い場所になっている。見届けたい虫はアリジゴク。この土の中に住んでいる。
いたいた、いました。蟻地獄が見事なすり鉢を作っていた。厳冬期は気配も感じられなかったが、見渡したところ15個はあった。直径数センチのロト状の穴の底に、アリジゴクという小さな虫が1匹ずつ隠れているはずだ。
見渡したところ砂のように細かい土でできたすり鉢だけで、虫の姿は気配もないが、黒アリがせわしなく歩き回っていた。
ところが思いもかけないことに作業中のアリジゴクがいて、彼はすり鉢の斜面をらせん状に巡りながら穴の形を整えようとしていた。捕食するところはよく見かけるのだが、すり鉢を作る場面に出会ったのは初めてだ。期待以上の場面に出会った嬉しさは、ちょっと言葉にならないくらいのときめきである。腰を据えて作業を見物。
アリジゴクは、ウスバカゲロウの幼虫だ。カゲロウは、儚いものの代名詞で、あっという間に命を終えると言うが、ウスバカゲロウは違う。肉食で1月は生きる。幼虫のアリジゴクは、英名をアリライオンといい、まさにアリにとっては恐ろしいライオンのような存在である。
10ミリ前後と見えるアリジゴク君は、勢いよく斜面を巡る。後ろ向きに進んで行くが、体は砂の中、見えるのは頭についている巨大なハサミだけだ。ハサミの長さは3ミリか4ミリだが、体のサイズが10ミリだから大きいと言って良いと思う。後すざりで見えていないだろうに穴の形は真円で歪みがない。斜面だから土塊が次々と転がり落ちてくる。彼は塊をハサミで掴み取り、外へ放り出す。これをやるためには土塊が見えなければならないわけで、後すざりは合理的だと思った。直径数ミリの土塊も放り出し、穴から7、8センチは飛ばす。小さなものやダンゴムシの殻などは10センチ以上も飛ばす。残るのはコナのように細かい土砂だけだ。完成し満足した彼は、ロト状の底に身を沈めてしまった。
そこでアリを捕まえて、穴の中に落とすのが、私という悪者である。
「それはもう、あなた。あれじゃあ蟻地獄ですよ。もがけばもがくほど、はまってしまうんです」
こんな例え方をして、声を潜めて噂をする。そんな小説を読んだことがあるかもしれない。万が一にも経験はしたくない場面だが、蟻地獄はコレをやって成長してゆくのだ。落ちたアリは、当然這い上がろうと努力の限りをつくす。それを察知した蟻地獄は、砂つぶてをアリの足元にぶつけてゆく。パッパッとぶつけるから斜面は崩れてゆく。アリの足は、さらに斜面の砂つぶを転がし、次第に穴の底へと落ちてゆく。アリジコグは、作業に用いた大きなハサミでアリを挟み、土中に引きずり込む。
終わりだ。アリはアリジゴクが注入する消化力のある毒液で溶かされ吸い取られてしまう。この毒液はフグ毒の130倍といわれる。ダンゴムシも、良くはまってしまうから相当大きなものも餌食になる。
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