文房 夢類
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富士猫の話 #4 尾

猫の尾
犬の尾はさし尾と巻き尾があり、巻き尾は左巻き、右巻きがあり、左巻きの尾の犬が、途中から右巻きに変わることはない。また、さし尾と言って巻かずに伸びている犬は、巻くことはない。私が見て知っている犬の尾の振り方は、喜んだときにむちゃくちゃ振りまわす。たとえば留守番をしていて、ただいま、の声がしたとき。オモチャが気に入って遊ぶときなど。好きな異性の犬と出会ったときには、人には見せない、微妙な緊張をはらんだ静かな振り方をする。また、強く警戒する、あるいは怒っているときに、尾を振るのだ。喜んでいるときとは違い、ゆっくり、と振る。たいてい低いうなり声を伴う。これを歓迎の印と見誤ると噛みつかれることになる。
では、まだつきあいの浅い猫ではどうでしょう。お手上げであります。尻尾の形、長さが色々で目茶苦茶。もちろん、特定の種では統一されていて、アメリカン・ショートヘアの尾はさし尾で長い。どの猫も、犬のように巻かない。
マルオという外猫がいて、私はこの、白地に黒い斑の雄猫の面倒を見ている。寝る場所とトイレ場所、それに食物を用意している。はじめて庭に現れたとき、丸い尾をしていたのでマルオと名付けた猫。マルオの尾は一見、団子のように丸いが、実は鈎のように曲がっているのだった。猫は、犬のように尾を振らない。そう思い込んでいたが、マルオはご飯を貰うときに尾を振る。ご飯のたびに、ご飯を見つめて尾を振る。丸い尾なので、痙攣しているようにも見えるが、大喜びで振っているのがわかる。先日、玄関前で出会ったら、私を見て尾を振って寄ってきた。よしよし、と撫でたら仰向けにひっくり返った。どうも、雄猫のほうが無邪気だ。
富士が長い尾を振るときは、ごはんに関係ない。犬のような振り方ではなく、長い尾を振り回す、という感じで、それは私が手を振り回すのと似ている。離れた所で尾を振り回し、じっと私を見ている。私は同じような動きで片手を振ってみせる。と、素早く反応して更に尾を振る。やがて立ち上がり、誘うのだ、遊びましょ!
追いかけっこ。かくれんんぼ。ボールならぬ、ぬいぐるみ投げ。オモチャネズミを追いかける。富士はシッポを忘れて走り回る。抱いているときに、派手に尾を振ることがある。これは、降りたい、抱っこ飽きた! と言っているのだ。富士の尾の使い方は、尾話である。尾が表情を持ち、動きは言葉の代わりをしている。私は話しかけながら、手の動きで伝えるのだが、これは富士の尾話を覚えて、使うことにしている。富士は私の腕を尾と認識しているらしい。しかし、まだ修行中で、尾の先の方だけを、すこし動かすような技は、まだできない。というか意味するところが掴めていないのだ。猫の尾はなかなか深いものがある。
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