文房 夢類
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猫の春

猫っかわいがりをしている富士は、わがままで自分本位、食いしん坊の甘ったれお嬢ちゃん。何をしても、何もしなくても、おお、よしよし。わああ、可愛いーにゃー、と言われている。
外猫のマルオは男の子で、富士が生まれる前から庭に来ているのだからもう、人間にしたら還暦近いのではないか。衣食住とトイレを見てやっているが、もともと自由猫なので、彼なりの活動をして過ごしている。
食住はともかく、衣について何をしているか、というとブラシをかけている。これをすると野良ではない、世話をしてもらっている猫だと遠目にも知れるのである。むやみに叩かれないようにとの配慮。
先週のこと、マルオが横っ面を血だらけにして朝帰りをした。猫パンチを食らったのだ。女かショバ争いだ。抱いてやり話しかけてやると、獰猛な顔でうっとりしている。綺麗にしてやり食べさせた。
その翌朝、ヒヨドリを持ってきた。ま、昨今は人間にも、贈り物をするときに、相手の好みを想像し選ぶ人もいる一方、あたしってコレ好きなもんで。などという人もいるから、マルオを批判するわけにはいかない。
どう? 気に入ってくれた? と得意気である。ありがと、というしかない。
満足げなマルオは私の足周りを8の字に回る。と、斜め前の家から茶トラの猫が現れた。若い雄猫、新顔。と、マルオが私から離れた。ゆっくりと向かう姿は凄みがある。
低く構えて踏み出す足、両肩の筋肉が盛り上がり、もりもりと音が聞こえそうだ。ガレージの陰に消えた2匹。
なるほど、逃げる時は腰から逃げるんだな。若猫は腰が引けて、見合った瞬間から負けてたなあ。そこへマルオが戻ってきた。言うほどのことでは、という目つきだった。
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