文房 夢類
文房 夢類
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余白

昨日と一昨日は灰色の日だった、がそれもまた落ち着いて静かな日であった。九十半ばの病母と長い年月を一つ屋根の下で暮らし、母が逝ってのちに音信が途絶えていた友達から、この静かな日に分厚い封書が届いた。葉書の絵に託して問うても、一向に音沙汰のない日々を案じていたが、やはり立ち直ってくれて、手紙の内容は日本画の余白の美についてだった。明るい、賑やかなデスク回りになった、喜び勇んで余白の議論に加わった。等伯の「松林図」を挙げる彼女。やがて言葉の余白に移る私。分厚い返書に封をして雨の中をポストに向かう。ともだちは、長い看病ののちに、余白の時を入れていたのだった、どうしても必要な空間、そこに肝心なものが在るのだ、光も闇もある。
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