街の顔
19-11-14 19:06
外出した帰りの乗継駅、新宿で日が暮れた。久しぶりだ、ちょっと歌舞伎町を散歩しようか、と東口に出た。居眠りしながらでも歩ける界隈である。青梅街道へ出て30分足らず歩いたあたりで生まれ育ったのだから、新宿は地元に近い街である。歌舞伎町がきれいになったと噂に聞いていたが、それはほんとうだった。明るく健康的な街になっていた。縦筋の通りから横筋の細道へ、また縦筋へと散歩する。歌舞伎町を眺めようという見物客が多いのは前からのことだが、外国の人が増えた。人だかりに近寄ったら果物屋だった。串団子が並べてあり、これが人気を集めているのだった。イチゴを3つ、串刺しにして200円。男の子や女の子たちが騒ぎながら、ふたりで1串買い、食べ合って笑いさざめいているのだが、まあ、どの子たちも体格のよい、背の高い子たちである。店に入るでなし買うでなし、歩きながら昔を思う。アベックという言葉があったっけ。いまはカップルというらしいが、私は使ったことがない。書いたことは、さらにない。当たり前の日本語として用いている文章を多々見かけるが、これも必要なことに違いない。時代を写し取るものは映像に限らない、時代の言葉を写し取る役目は文字が担っているのだから。
歌舞伎町を出て、お気に入りだった界隈へ足を向けた。が、どこもここも企業がやっているんじゃないか、個人の店は消え去ったらしい。昔の店は小さくて奥行きもなくて、だから主人の顔があった。新宿に食道横町、渋谷に恋文横町。新宿には、ほかにも色んな横町があって月島行き、岩本町行きの都電が走っていた。
新宿は宵の顔を見せていた。夜の顔つきに変わるには、すこし間がある。ご無沙汰続きの新宿だったが、時計を見ずに街の顔色で時間が分かる、この街の鼓動は残っていた。横丁が消える、ビルが建つ、見た目がどんどん変わってゆく街を、昨日東京に出てきたような顔が歩く。見えない時計が新宿の時を刻み、ビルも車も、またたくまに新宿色に染めてゆく。変わるからこそ新宿、実は同じ鼓動の歌舞伎町、これが東京。
歌舞伎町を出て、お気に入りだった界隈へ足を向けた。が、どこもここも企業がやっているんじゃないか、個人の店は消え去ったらしい。昔の店は小さくて奥行きもなくて、だから主人の顔があった。新宿に食道横町、渋谷に恋文横町。新宿には、ほかにも色んな横町があって月島行き、岩本町行きの都電が走っていた。
新宿は宵の顔を見せていた。夜の顔つきに変わるには、すこし間がある。ご無沙汰続きの新宿だったが、時計を見ずに街の顔色で時間が分かる、この街の鼓動は残っていた。横丁が消える、ビルが建つ、見た目がどんどん変わってゆく街を、昨日東京に出てきたような顔が歩く。見えない時計が新宿の時を刻み、ビルも車も、またたくまに新宿色に染めてゆく。変わるからこそ新宿、実は同じ鼓動の歌舞伎町、これが東京。