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春の猫

外猫坊やのマルオは、秋口からしっかり食べてきたので、冬中元気に過ごしてきた。前年の春季闘争で右側の目の上を負傷してひどい顔つきになっている。年々、年を取っているのだから、もう無理をして欲しくない。温かにして眠り、朝ご飯を待っている姿を見ると、ホッとしてなにかと声を掛けてしまう。
ところが案じたとおり、2月末から彼の生活は不規則になった。夜中の集会に出かける。女猫をめぐり闘う。朝になっても現れない。そして。左目の上に深い傷を負って戻ってきた。止めなさいって言ってるでしょ! と文句を言っても、甘ったれのおねだり声だけである。恒例の春季闘争。汚れきって血を流している身体中から戦いの精気が溢れて、まなざしだけが疲れとないまぜに鎮まっている。
しかし今年は、さらなる新たな闘争が加わった。それはテリトリー死守闘争である。彼の城はメロディから奪い取った我が家の庭である。ここに、安全に眠れる場所と、顔を出せば貰えるご飯がある。また、トイレの場所もあって、これも大切な条件だ。用を足している最中は無防備になるので、寝場所と同様に、安全な場所が求められる。この城を狙う猫が現れたのだ、デブの黒猫と、精悍な大型白猫である。黒猫は新入り、白い方はこの界隈のボスだ。マルオの体力に陰りが見えたと見て取り、追い出しにかかってきた。こうなると彼女なんかは、どうでも良い。テリトリーは命に関わる問題だ。夜明け前の庭で繰り広げられる大戦争。砂利の庭だから蹴散らかす。これが猫の力かと、信じられないほどの脚力だ。だからといって、私が介入できるものではない。悩み深い春の猫である。
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