文房 夢類
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府中美術館

マリー・ローランサンの展覧会を観てきた。場所は、都立府中の森公園内にある府中市美術館。京王線の東府中駅を降りたところから案内板があり、バスも出ているが歩いて20分。整備された広大な公園で、美術館は、突き当たりにあった。ローランサンの絵をみるのは初めてだった。パステルカラーのソフトな絵、詩人アポリネールの恋人。それだけしか知らない画家である。
70点のうち、一点をのぞき全部がマリー・ローランサン美術館所蔵の絵。画学生の時代の絵からはじまり、晩年まで、世紀末にパリで生まれ、1956年に亡くなるまでの絵が並ぶ。
お針子の母とふたり暮らしの少女が、画塾に通い始めてから成長してゆく姿が、絵から絵へと辿ることで見えてくる。非常に巧みな展示技術だと思った。古典を勉強していることも見える、ここにピカソがいて、コクトーもいた、そしてアポリネールと別れた、そんな気配も伝わってくる。フォービズム、キュービズムの影響を受けながら染まらず、独自の絵を創りあげた靱さに目を見張った。人を見る目が育ってゆく、それが見える。小説書きも人柄が露わになるが、画家もゾッとするほど見えるものだなあと胸が痛くなった。一枚、一枚の絵ではなく、全ての絵から立ちのぼる気配を受けて、この黒い瞳の画家に会った気分になり、帰ってきた。
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