文房 夢類
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年の始めに

2016年が始まりました。この年に共に歩む文字を「勇」にしようと半年ほど前から決めていました。
なんで「勇」か。それは私が弱虫人間で、万事につけて引っ込み思案、消極的。強い力に対して立ち向かうことができないたちなので、せめてこの勇気の勇、強力な力の塊のような文字を抱いて進んだら、安全保障関連法案、特定秘密保護法などを強行に制定、推し進めてゆく相手に抵抗できるのではないか、そう考えたからです。
私には幼い時代に身についてしまった先入観が数多くあり、この偏見を洗い落とすという面倒な作業がついて回りました。そのひとつが権力に対する恐怖でした。たとえば戦時中に戦争反対を口にすれば、それは命に関わる危険を孕んでいましたから、単なる妄想ではなかったのでしたが。
政府は、折角自由に発言できる世になったのに、逆行するかのような法的規制をかけ始めました。言論の自由こそ、社会が呼吸する空気です。これを制限されたとき、社会は健康を損ないます。
勇気とは、いさましい意気、物に恐れない気概をいいます。私は、勇気を持って思うところを書いていこうと思いました。

さて、男性的な字だなあ、男という字が主体なのだからと思い込んでいましたが、男という字に含まれる田は、田んぼだし、力という字は耒(すき)をあらわす、これは農具ですから、男という字自体に「いさましい」とか「物に恐れない」という意味はないのでした。また、勇から力を外した部分は、甬であり、これは筒型の容器をあらわします。となると、いったいどこから勇ましさが生まれたのでしょう。この字の、どこを探しても勇猛、勇敢、勇気などの気配はありません。
これは困った、もっと力強い字を探さなくちゃ。でもやっぱり、この字を掲げていこうと決めました。ほんとうの力強さがここに組み合わさってあるのではないか。地についた地味な暮らし、毎日の平凡な営み、人の基本となる協力、いろんなものが見えてきます。これを守り育て、なんとしても手放さないことが、ほんとうの勇気なんだ、と思い直した元日です。
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