文房 夢類
文房 夢類
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先輩はやっぱり先輩だ!

近所で建築中だった共同住宅が概ね完成した。隅から隅まで輝いている。富士と散歩に出たら、勘の良いマルオ、外猫のマルオがどこからともなく現れた。一緒に朝日が射す道路に立ったら、マルオが先に立って新築の建物に向かっていき、富士がマルオに続いた。
びっくりした。なぜかというと、怖がり屋の富士は知らない場所へ行くのは大嫌いで、無理に抱いて連れて行こうとすると、身をよじって腕からすり抜けて逃げてしまう。無理無理に抱きしめるとガタガタ震える。それが、どうしたことかマルオについて行くではないか。
マルオは真新しい建物の角、雨樋の根元などを巡り歩き、耳の後ろから首筋にかけて執拗にこすりつけては進む。ははあ、臭い付けをしているな? 新しい場所を自分のテリトリーにしようとしているんだ、と私は察して富士のリードを握ってついて行く。というのは、富士はマルオの仕草をそっくり真似て、同じことをしながらついて行くのだ。建物を回り、臭い付けが終わったマルオは駐車場に出ると、いきなり寝転がり、さらに四つ足を上に上げて身をよじり出した。続いてきた富士は並んで転がり、サル真似ではないネコ真似をしている。
マルオは、すでにテリトリーを確保していたのではないか。今朝は富士のために回ってくれたのではないか。マルオは何も知らない富士に、新しいテリトリーの確保をやって見せてくれたのだなあ、と思った。良い先輩に恵まれて富士は良かったね、と嬉しい。富士も、先輩の動きを見習う力を持っていたのだから立派だ。
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