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Oct 2018

先住民アイヌはどんな歴史を歩んできたか

先住民アイヌはどんな歴史を歩んできたか』著者=坂田美奈子(さかた みなこ)発行=清水書院2018年 サイズ=21cm 100頁 ¥1000 ISBN9784389500887
著者=1969年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程学位取得終了。苫小牧駒澤大学教授。専攻はエスノヒストリー 先住民史 北海道史。
内容=「歴史総合パートナーズ」no.5 横書きの100ページ。
皆さんはアイヌという名を持つ人々が日本に暮らしていることをご存知でしょうか。という出だしで、優しく話しかけるように始まる、いま、学校で学びつつある若い人たち向けに書かれた「アイヌが歩んできた歴史」。
はるか昔から書き起こし、明治政府の時代に至るまで、静かに整然と記されている。です、ます体の、穏やかな語りは、読む者の気持ちに染み入りやすく温かい。
いままでアイヌに対して好意と関心を寄せ、抱いてきた気持ちが、この本により、偏りなく整えられただけでなく、一歩前進し、大きな歴史の中に置いて考えることができるようになったと思う、遅いけど。
私のアイヌとの出会いは、アメリカ先住民を迂回した回りくどいものだった。白人は、なんとひどい行いをしてきたことだろう、挙げ句の果てにリザーベーションエリアに押し込めるとは! と憤慨し、ふと日本を振り向いたとき、そこにアイヌの人がいたのだった。
いろいろな縁が重なり、札幌生まれのアイヌ犬、千早とともに暮らすようになり、静内のアイヌの家族とも知り合いになって仲良くしてもらった。
あれこれと読み漁り、松前藩の行状に腹を立て、シャクシャインについて読み、銅像を見上げ、坂上田村麻呂と蝦夷について調べて悲痛な思いに打ちのめされ、極めて激しく感情的になった。私は日本人たちが許せないのだった。
しかし私は、人が人に対してした個別の仕打ちだけを追い、怒っていたのだった。本書は、シャクシャインについて一言も書いていない。松前藩が、どれほどアイヌに対して悪辣で、ずるいことをしてきたかも、具体的にな何一つ書いていない。
しかし。この本には、私が全く目を向けなかった明治政府について、記されているのだ。
(2)アイヌ・モシリはどこへ‥‥明治政府の政策 
この章は48ページから始まる中心部分だ、国の政策というものが、どれほど恐ろしい影響を及ぼすかを目の当たりにして愕然とした。
そうだった、リザーベーションエリアを発案し、作ったのはアメリカの政府だったのだし、アメリカ、ファースト! と叫ぶ大統領だって、政治の力で決めてかかろうとしている張本人だ。なぜトランプさんは、アメリカのファーストが誰だったのかに思いを致さないのだろう? 
これからのアイヌと内地の大勢の人々が、どうすれば良いか、著者と共に考えることができる本。まずは、この本から入って欲しいとつくづく思った。繰り返す、末端の、表層の部分に入る前に、この100ページを開いて欲しい。
今まで、このように整然と、感情を抜きにして、ありのままを記してくれた書物があったろうか。このように描かれている全体を見渡せば、個人が個人に対して行った差別態度への怒りどころではない、国が政策として推し広めた規制の影響の強さ、広さ、長さは計り知れないものだと身にしみる。
ということはつまり、今現在の私たちは、世界中の政治の流れを見張っていなければならず、現内閣の動静を厳しく監視し続ける必要があるということだ。
「歴史総合パートナーズ」に注目しましょう。

アゼルバイジャンを知るための67章

アゼルバイジャンを知るための67章』著者=廣瀬陽子(ひろせ ようこ)発行=明石書店2018年 サイズ=19cm 426頁 ¥2000 ISBN9784750346724
著者=東京大学大学院法学政治学研究科博士過程他に取得退学。政策メディア博士。慶應義塾大学総合政策学部教授。著書『ロシアと中国反米の戦略』など
内容=「エリア・スタディーズ」シリーズのNo.165。本書はアゼルバイジャン共和國について、67章の見出しをつけて紹介している。巻末に参考文献。
この国は「戦略的要衝」に位置することから、厳しい対外関係の中で生きぬこうと努力している国。その歴史、政治、民族、紛争、文化。そして日本との関わりなどを紹介している。執筆者たちは、それぞれアゼルバイジャンでの仕事の実体験を持ち、研究もしている専門家で、廣瀬陽子氏の担当部分も多い。
感想=アゼルバイジャンて、どこにある、どんな国? どこにある国か、聞かれても返事できないような国の一つだ。
この「エリアスタディーズシリーズ」は、こんな時に開くと、まるで行って見てきたかのようにわかる。アゼルバイジャンは、ソ連解体を機に独立した国だった。
この国の概説・歴史・政治・民族・人口・紛争・石油・経済・外交・文化。最後に日本との関わりが出ている。
とにかく日本について描かれている最終章を開いてみた。
あら~、梅酒を売ってるって。日本文化についてすごく知っているのだ、びっくり。
難民支援の章では(株)富士メガネの金井昭雄社長が難民の視力ケアについて書いている。なんという力と、心を傾けて支援していることか、感動した。日本の支援は半端じゃないのだ。
アゼルバイジャンの大きな見どころが建築。
オイルと天然ガスなどの地下資源が土台となり、首都バクーは、建築見本市のような実験的・冒険的建築が次々と建てられているという。多数の写真が出ているが、カラーで、大判で見たかった。
カスピ海沿岸の海洋公園に建つ絨毯博物館は、巨大なぐるぐる巻きの絨毯だ!
思わず読みふけっていたら、ザハ・ハディド氏の、ありえないような曲線集合体の複合施設があった。ザハさん。そうだった、彼女が東京新国立競技場のデザインを提供されたのだった。あれを見たときは、なんという形かしらと呆れたのだったが、アゼルバイジャンに建つザハさんの作品建築は、想像を絶するものである。これに比べたら、日本向けのデザインなどは大人しいものだ。もっと活躍していただきたかった、としみじみ思う、なんという勇気と想像力を持った作家だろう。私は、建築家という職業ほどヒトと密着している仕事はないとさえ思う。建築家は哲学者でもあるとも思う。私はガウディを信奉しているので、女性建築家、ザハさんをもっと応援したかった。私はザハさんの建築を眺めるために、アゼルバイジャンに行きたい。
ここまできたら止められなくなり、文学のページへ飛び、オイル、国際関係へ、民族へと結局全部読む羽目になった。
名前について詳しく書かれていて、男性の名前、女性の名、政治の移り変わりで名付け方が変化するなど、思わぬところで、土地の人たちに直接出会ったような、興味と親しみを感じた。
ザハさんにも会えたし、リンゴが富士と呼ばれていることも分かった。
この本のおかげで良い旅をしたことを感謝しますが、実際に行きたくなってしまうところが、このシリーズの毒です。

出版の魂

出版の魂』副題=新潮社をつくった男・佐藤義亮 著者=高橋秀晴 発行=牧野出版2010年 サイズ=20cm 237頁¥1900 ISBN9784895001298
著者=たかはし ひではる 1957年秋田市生まれ 早稲田大学卒業 上越教育大学大学院修了。現在秋田県立大学教授。著書に『七つの心象/近代作家とふるさと秋田』(秋田魁新報社)など多数。
装丁・題字=緒方修一「装丁家・緒方修一のオフィシャルサイト」があるので、お訪ねいただきたい。人物紹介は、このサイトに出ているプロフィールを丸写しした。
装丁家。アートディレクター。OLDNEWS Co.代表。1963年福岡県柳川市生まれ。新潮社装丁室を経て独立。これまで沢木耕太郎、宮部みゆき、宮本輝の書籍、小学校の国語の教科書(光村図書)、「百年文庫」(ポプラ社)、「エクスリブリス」(白水社)、「ロアルド・ダール」(評論社)などのシリーズ作品、月刊誌「小説すばる」(集英社)、「本」(講談社)などを手がける。その他、映画「カンゾー先生」のタイトル文字、雑誌「coyote」のロゴデザインなどがある。1994年ドイツの「世界で最も美しい本コンクール」で銅賞受賞。文星芸術大学非常勤講師、造本装丁コンクール審査員。
以上で人物紹介終わり。本書のタイトルの文字に惹かれたので調べたのだが、新潮社に縁のある方であった。
内容=本書は「秋田魁新報」学芸欄連載「出版報国男子の本懐/「新潮」創業の佐藤義亮」(2008年1月〜2009年3月)に加筆・修正したものである。と巻末に記されている。著者略歴も本書の奥付による。
巻末に人名索引・事項索引・佐藤義亮略年譜と主要参考文献あり。
副題にある通り、出版社・新潮社の創業者、佐藤義亮(さとう ぎりょう)の生い立ちから終焉までを辿った書である。佐藤義亮という人・「新声」発行・出版へ・新潮社の出発・展開と結実の五章編成。
本書は牧野出版から出版している。牧野出版社社長の佐久間憲一氏は1957年生まれ、1982年新潮社に入社、「フォーカス」編集担当、「新潮OH!文庫」編集長などを経て、ポプラ社で一般書の編集、Webマガジン「ポプラビーチ」編集を経て牧野出版代表取締役。
この方も装丁の緒方修一氏も新潮社に縁があり、著者は佐藤義亮と同郷の秋田生まれという縁がある。
あとがきの最後の三行を紹介します。
 執筆に当たっては、新潮社、新潮社記念文学館、秋田魁新報社、秋田県立大学図書館から、支援と協力を頂いた。そして、牧野出版の佐久間憲一社長の情熱的な勧めと上野裕子編集長の的確な助言なしには本書は成らなかった。深謝申し上げる。 紹介以上。
秋田の荒物屋の四男として生まれた男の子が、やがて東京に出てきて本の一本道を辿り進むのである。雪の国秋田。小学四年生までで十分だ、それ以上学校へ行くと生意気になると言われた時代であり、土地柄だった。この一歩から記す佐藤義亮の一生を、著者は、誠実に根気よく辿りつつ、本人の言った言葉、書いた文章をふんだんに挿入して伝えてゆく。それゆえに佐藤義亮の、まさに謦咳に接する思いの生まれる書物である。
この少年は、家業が嫌で、遠い都会に出て行ったのではなかった。荒物屋さんを経営して暮らした父、為吉は書を読むことを好んだ人だった。だから、この子の資質を見て漢籍、かな遣いなどの習得へ導いた。土台には、この父がいるのであった。この根本の部分を踏まえて進めて行く新潮社誕生、発展の姿は、どのページを開いても心打たれるものが溢れている。得てして伝記といえども著者が前面に進み出て云々するものだが、ここに著者の姿は見えない。それでいながら、なんとも暖かく親しく、敬愛に満ち満ちた空気が書物全体から香り立つのである。なんだろうこれは、と装丁家を調べ、出版社を調べた次第。
新潮文庫を立ち上げた、その第一冊目が川端康成の『
雪国』だったという。雪の国の書である、どこもかしこも、心がこもっている。著者の高橋秀晴氏のあとがきで「深謝申し上げる」と、結んでいる。私は、これが好きだ。よくあるではありませんか、お礼を申し上げたいっていう言い方。言いたい、っていうの? 今言ってるわけじゃないのよね? いつ言うのよ。となるのだけど。
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