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Oct 2011

動物の解放

『動物の解放』(ANIMAL LIBERATION) 改訂版  ピーター・シンガー (PETER SINGER) 著 戸田清 訳 人文書院 2011年発行 ISBN 978-4-409030783 ¥4400 210mm X 148mm 402頁
これは改訂版で、初版本は『技術と人間』1988年。巻末に文献5頁。
著者は、1946年オーストラリア生まれ。哲学者、倫理学者。本書は、彼の著作の中でもっとも大きな影響を与え続けている本で、動物の持つ権利について主張している。「ザ・ニューヨーカー」誌は、彼を最も影響力のある現代の哲学者と呼び、「タイム」誌は、彼を世界の最も影響力のある100人の一人に選んでいる。
内容は、ヒトが、ヒト以外の動物を、どのように扱うべきか、という問題について考えを進めている。人間が、人間の利益のために動物が本来彼ら自身のものとして所有するのが当然である利益と権利を奪う態度を「種差別」とみて非難している。とくに動物の扱いの中でも、動物実験の実態、工場畜産の現状、絶え間ない大量殺戮のありさまなどを読むと、今、この瞬間に立ち止まり、根本的に考え方を見直すべきだという、深刻な思いに駆られる。彼自身は30年間に渡りベジタリアンだという。
外国の事情は知らないが、日本の法律では、動物を「もの」として扱っている。だから交通事故に遭っても「物損」でしかないし、マイクロチップの会社も、命ある者に対する心情は、まったく見られない。これでよいのか、よいわけがない。「種差別」について、一人でも多くの人が考えてもらいたいと願う。

火山と地震の国に暮らす

『火山と地震の国に暮らす』鎌田浩毅(かまた ひろき) 著  岩波書店 2011年7月7日発行 ISBN978-4-00-005210-8C0044 ¥1900E サイズ128cmX187cm  索引つき 188ページ
著者は1955年東京都生まれ。東京大学地学科卒業、現在京都大学大学院 人間・環境学研究科教授 理学博士  HP :http://www.gaia.h.kyoto-u.ac.jp/~kamata/
帯に、地球学者の熱い思いを込めたエッセイとある。私は、はじめから終わりまで熟読した。火山学の専門家が一般の生活者に向けて高度な部分をも含ませながら、受け入れ易いかたちで火山について知らせてくれる。目次は、科学を減災に活かす。火山と地震の国に暮らす。科学の方法。「伝える」から「伝わる」へ。市民のための科学。の5本。
内容は、日本の火山の歴史と研究者たちの働き、今回の地震、そして展望と続く。今回の地震は気象庁によって「東北地方太平洋沖地震」と命名された。「東日本大震災」という呼び方は、人が被害に遭う「震災」に対して政府が名付けた名であり、自然現象としての「地震」には、地震情報を管理する気象庁が、このように名付けている。このことを私は、知りませんでした。
地震学者たちは、次の巨大地震は2030年代には起きると予測、著者も2040年までには、確実に起きると考えている。しかし、月日まではわからないという。ここまで分かる、これは分からぬ、とはっきり書いてくれる学者の明快さが快い。本書で著者がくりかえし述懐していることは、学者が研究に没頭する一方、いかにその稔りの果実を普通の人たちと分かち合うか。伝える努力をすることもまた、学者の大きな勤めだろうということだ。こうした果実を手にしたのが北海道有珠山の噴火で、一人の犠牲者も出さなかった。
有珠山噴火の際の住民の動きを知った富士山麓、河口湖周辺では、これを機会に、住民にハザードマップを公開して避難の手だても考えることとなったのだ。このことは、本書の内容にはない余分なことだが、それまでの河口湖では、下手に富士山噴火を話題にすると観光にさしさわる。寝た子を起こさないで欲しい、と主張して伏せて来た経過がある。
学者の研究が有珠山を救い、さらに波紋はひろがって河口湖を改心させるに及んだのを、私は目の当たりに見て感動した。
コラムが2つある。1つ目が中村一明教授について。中村一明著『火山とプレートテクトニクス』(東京大学出版会)の紹介。2つ目が加藤周一について。ここでも『羊の歌』『続 羊の歌』を紹介している。
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