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Nov 2014

原発処分 先進国ドイツの現実

『原発処分』副題=先進国ドイツの現実 著者=広瀬 隆 発行=五月書房2014年 186頁 190cm ¥1300 ISBN 9784772705080
著者=広瀬隆(ひろせたかし)1943年東京生れ メーカーの技術者を経て執筆活動
内容=2013年に、著者が山本太郎氏らとともにドイツ各地の廃炉と放射性廃棄物処分場を見学、取材をした結果を写真入りでまとめている。
山本太郎氏は1974年生まれの俳優・政治家。
感想=福島原発事故の後、ドイツは原発全廃を宣言した。その後の処理は如何に、と私は注目して読んだ。メルケル首相は、もともと原発推進論者だった、猛反対していたのは市民であり、日本の大事故を見て、遂にメルケルも全廃を決めたといういきさつがあった。
さて注目の「廃炉」と「処理」はどうだろうか。本書は3章あり、ドイツ廃炉の現場。次が放射性廃棄物の処分場で起こっていた現実。最後がドイツの選択・日本の選択である。まず学ぶにも比較するにも、ドイツと日本では土地が違いすぎる。一方は地下水と岩塩が問題であり、日本は火山国、地震である。加えて地下水問題である。日本のほうが、とんでもなく危険であり困難なのだ。
それではドイツは着々と、確実に廃炉への道を突き進んでいるであろう。これを期待して読んだが、私の予想は外れた。解体廃棄物のうち、放射性物質扱いにするのは、全体の1%だという。残りは家庭ゴミ扱いだという。のちに眼鏡のフレームやフライパンになって市場へ出てくる可能性がある。広瀬氏と山本氏たちは、最終処分場の候補地、ゴアレーベンの立坑のシャフトに降りて、地下840m地点に伸びる水平坑道を視察した。ここで100万年のあいだ管理するというのだが、坑道には帯状に石油が滲出し、ガスが出ているために圧力計が設置されていたという。当所がまだ候補地とされている理由は、この辺にあるのだろう。もう一つの最終処分場でも大同小異で、最後はコンクリートで埋め棄てにする計画。モニターもなしで、埋めて忘れてしまおうモードだと分かった。つまり処分については、お先真っ暗状態なのだ。
もう一つの問題、地域住民との関わりについても取材している。この問題は、天地の開きがあるというか、正反対といったほうが正確だろう。ドイツでは「地元の雇用問題は、自治体の責任」であり、電力会社は地元の雇用について頭を使ったり、口を挟むことはない。広瀬氏と山本氏は「地元とベタベタした関係を持っていないんだ、これが原発ゼロ時代に向かう政策をスムーズにしている社会構造だったのだ」と顔を見合わせた、と書いている。ドイツでは、原発が町に来ても、電力会社の落とす事業税が入るだけであった。日本のやり方は、汚い。
ベルリンの通りで手当たり次第に感想を聞いたところ、東京オリンピック開催を、ほとんどの人が危惧していたそうだ。私は、日本の場合、物理的な問題もあるが、それ以上に人の気持ちの関わり方が大きな障壁だと思った。合理的に処理する力のあるドイツですら手に余る放射能被害だ、これに加えて日本人のベタベタモードがくっついたら、先は知れているではないか。

脳に棲む魔物

『脳に棲む魔物』BRAIN ON FIRE 著者=Susannah Cahalan スザンナ・キャハラン 発行=角川2014年 376頁 サイズ19cm ¥1800 ISBN9784047313972
内容=「抗NMDA受容体自己免疫性脳炎」という病。世界で217番目の患者だと告げられた本人が、発病から正しい診断を受けて回復するまでの道のりをノンフィクション形式で書いている。
感想=著者が記者である故に、たくみな構成と運びだ。が、精神疾患と誤診される危険を多くはらんだ、まだ知られていない病を世に提示することが主要な目的であるならば、削った方が分かりやすかった、と感じる部分が多々あった。たとえば家族、恋人、友人など周囲の情景に多くの頁を費やしているが、おおむね普遍的なものであるゆえに、むしろ割愛したほうがすっきりしたのではないか。
 精神疾患と見られてもしかたがないような症状の数々、真摯な医師たちの真剣な診断が、実は誤診(というよりもまだ知られていなかった疾病)であったという深刻な様相と、その解決への道を、端的に語ってくれたほうが、この疾患そのものに興味を集中させる読者にとっては、ありがたかった。この疾患は、「エクソシスト」や、日本の「狐憑き」などを思い合わせて、昔の恐怖が実は苦しい病であったとも想像できる、注目すべきものと思う。
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