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Jun 2012

あきらめない

『あきらめない』村木厚子著 日経BP社2011年11月発行ISBN978-4-8222-6814-5 ¥1400 187mmX128mm 272頁
著者=1955年高知県生 高知大学卒業後厚生労働省入省 雇用均等・児童家庭局長などを歴任。現在は内閣府で政策統括官。同期の夫と2人の娘がいる。
内容=4章のうち、前半は生い立ちと、働き盛りの姿。後半2章が、本書出版の契機となった逮捕、拘留・釈放、復職について語られる。
大阪地検特捜部扱いの郵便不正事件を知ったのは、マスコミの報道だったという。著者が担当部署に問い合わせると、決済書も記録も一切ない、という返答。その団体が証明書を偽造したのだ、と考えていたところ、係長の逮捕、そして突然の逮捕と家宅捜査と事態が進んでゆく。
それから独居房で13番という呼び名とされて半年余りを過ごし、無罪判決を受けた経緯が語られる。終章に夫と娘2人の、短い文章が出ている。本書は書き下ろし。この経験を「妹たち」に伝えないか? という日経ウーマンの編集者の言葉によって決心された出版だった由。妹たち、とは、これから先、働きつづける女性たちである。そして、これは誰にでも起こること、という気持ちも込められている。
最後まで、しぶとく「落ち」なかった村木さん。もっとも「落ち」やすいのが教師と公務員だという。ひどい取り調べや、関与を肯定した上司、同僚、部下のサインを見せられたときのショックなどの件(くだり)は、息が詰まる。のちに逆取材して、してもいないことについて、なぜ、サインしてしまうのかを訊ねたことも興味ある件であった。追い詰められて眠れなくなる、食べられなくなる、つまり生き物の基本を失う故と語っている。そしてご本人は、熟睡し、しっかり食べていたのだった。
逮捕されて持ち物を取り上げられてしまう寸前の隙に、スイスへ出張中の夫へ「たいほ」の3文字を送信する。漢字に変換する暇もなかったという。飛んで帰ってくる夫は、飛行機の中で一睡も出来なかった、と書いている。帰国してみると、娘たちは、いつものようにうだうだしてるではないか。面会の許可が出たとき飛んでゆくと、本人はのほほんとしているではないか、と書く夫。平然と家宅捜査を受けた2人の娘、高校3年の次女は受験勉強に励んだ、そしてすべてが終わったとき、娘たちは、はじめて母に抱きついて声を上げて泣いた、という。
書こうとして書いたのではない、自然に表出する家族の結束した姿に、感動する。
優れた弁護士に恵まれたこと、支援の輪が広がり、カンパを受けたことから経済的にも救われ、毎日、誰かが面会に来てくれたことの心の支えなどがあって勝ち取った無罪だが、もっとも強力なポイントは、本人の、徹底した資料の読み込みにあったのだなあ、と感じ入った。独居房で、よくぞ沈着冷静に、丁寧に資料を読み込んでいったなあ、というのが私の感想である。このことがなかったら、と思うと、ぞっとする。えん罪は、ある種の必要があるゆえに作られる場合があるから。

年金は60歳からもらえ

『年金は60歳からもらえ』森永卓郎(もりなが たくろう)監修 構成 溝上憲文(みぞうえ のりふみ) 光文社2012年3月発行 ISBN978-4-334-97680 ¥1000 174mmX115mm 196頁
森永卓郎=1957年東京生 現在獨協大学経済学部教授 専門=マクロ経済学・計量経済学・労働経済学
溝上憲文=1958年鹿児島生 フリージャーナリスト
内容=タイトル通りの内容で、対象読者は、いま年金を受ける世代から、10年後くらいに受ける世代。日本政府がデフレを脱却するつもりがない、という推論のもとに組み立てている。もう一つの土台は、日本政府に対する不信というと大げさかもしれないが、いつ、基本的なルールを取り崩さないとも限らない、という点にある。いま、もらっておけば、それは既得財産として保証される故である。
ただ、大金持ちと、超長寿確信者は、その限りではないそうだ。
森永さんの解説は、消費税についても(本書にはない)明快である。日本の消費税率が低い、というのは、まったくのまやかしであり、低く見えるのは消費税の名のもとに徴収している部分が低い数字を出しているに過ぎない、実は、世界中の消費税率(に含まれる税)を比較すると、日本は、とても高いという。これは、NHKの「視点・論点」で聞いたことです。

記者クラブ崩壊

『記者クラブ崩壊』上杉隆著 小学館2010年4月発行ISBN978-4-09825076-9 ¥700 P192 新書版
著者=1968年福岡県生まれ 衆議院議員公設秘書、NYタイムズ東京支局記者などを経てフリージャーナリスト。
内容=新聞・テレビが国民から「知る権利」を奪っている。官僚による情報操作、各社横並びの報道談合、海外メディアの日本撤退、これらの根源が記者クラブにある、という主張と解説。崩壊途上にある記者クラブの現状。
感想=なぜ本書を開こうと思ったかというと、最近の報道に疑問があるからだった。私が高齢になって実生活の中で日々、時間に追われることが減り、新聞社各社の社説を読み比べる余裕もできたことと、書いていない事柄を見る、話していない事柄を聞く、ということができるようになったことも関係していると思う。忙しい年代の、社会の中心的存在の壮年期の人たちは、よほど彼らの職業上必要としない限り、各紙の社説の比較などしたくても時間の余裕など、ありはしない。その年代の人たちが、最も必要としているにもかかわらず。
私自身が新聞記者と接触した経験は、ほんのわずかであったが、それにもかかわらず強烈に印象づけられた姿は、取材ではなくて警察まわりをして、ネタをもらって帰社する、はんこで押したような安穏なサラリーマン生活者の姿だった。書評を書くなどの文化部の記者は、文章も優れて見識の高い方々がいるが。与えられた餌に食いつき、それ以上の欲望はなく、しかも系列の主張からはみ出した意見記事は書かない。政治系も社会系も、どこも澱んだヘドロのよう。こんなふうに感じて不満を募らせる人たちが増えていて、私などは、その尻馬に乗っているようなものである。
さて、日本の記者クラブは、1890年、明治23年、帝国議会が発足した際に、取材を要求する記者たちが「議会出入り記者団」を結成したことに始まる。以来、全国の省庁、自治体、警察などに記者クラブが作られた。
いま、この記者クラブが問題となっている理由は、たとえば政治家の記者会見でも、クラブ所属の記者だけが出席できる仕組みで、フリーの記者や外国の記者などは参加できない。このため、イギリスの女性が殺害された事件の時などは、イギリスの記者が取材できずにたいそう困ったという。亀井静香という政治家がいるが、この人は、記者会見の時間の半分を記者クラブのために費やし、後半半分を大臣室で、フリージャーナリストなどに向けて開いているという。政治家の中にも不満を持つ人が何人もいるのだった。また、著者が所属していたNYタイムズ東京支局には、著者が在籍していた当時は10人以上いたスタッフが、6人に減り、ワシントンポスト東京支局は、支局を縮小、支局長の自宅に移し、ロサンゼルス・タイムズは日本から完全撤退したという。
日本は崩壊する。日本は(いったん)潰れてしまったほうがいいんじゃないか。そんなつぶやき声が湧く昨今に、気の小さい私は思わず深刻になってしまう。1945・8・15。この日にさえ、日本は潰れてしまうんじゃないか、とは誰一人発想しなかったはずだ。
本書も、読んでいただきたい。事実を書き、話す人間が、組織が、どれほど阻害され、はじき飛ばされているかもわかる。
今朝の東京新聞に、こういう見出しで記事が出ている。
「一人の力 未来は変わる 再稼働反対デモ」
このなかに、60歳の主婦の発言が出ている。
「自分で情報を集め、最終的に自分で判断できるようになるため、フェイスブックやツイッターを始めました」。
なんとすばらしいことだろう。高齢の人たちこそが、自分で情報を集め、なにが事実か、誰が誰を、どのように操作したがっているのかを見極めて、社会に還元してほしい。高齢者の持つ眼力、蓄えてきた能力を社会のために発揮してもらいたい。



時間栄養学

『時間栄養学』副題=時計遺伝子と食事のリズム 監修=日本栄養・食糧学会 編著=香川靖雄 2009年女子栄養大学出版部 発行
ISBN978-4-7895-5433-6 ¥3000 184mmX256mm 160頁
編著者=現在、女子栄養大学副学長 
内容=初版は2009年、現在第3刷。本書は2008年5月に開催された第62回日本栄養・食糧学会シンポジウム「時間栄養学」の講演をもとに新たに加筆・編集したもの。図とグラフが多く、読みやすいとは言えないが、各ページにサイドバーが設けられていて、ここにキーポイントを示してくれているのが助けになる。いままでに強調されてきた栄養の問題、カロリー過剰がいけないことなどの視点とは別に、時間がいかに生き物の体に影響しているか、という研究である。
朝食を抜くことが健康にどれほど悪いか、規則正しい生活が健康の元という、平凡なことが大切なことも納得できた。最近の子どもの寝る時間が遅くなっていることを取り上げていて、生育に非常に悪いという。また、具体的なことでは、牛乳を飲むのは夕方から夜がよいそうだ。カルシウムを蓄積するのは夜間である故だという。
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