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Feb 2015

放射線健康障害の真実

『放射線健康障害の真実』著者=西尾正道(にしおまさみち) 発行=旬報社 2012年4月 21cm 95頁 ¥1000 ISBN9784845112623
著者=函館市生まれ。札幌医科大学卒業。国立病院機構北海道がんセンター院長
内容=内部被曝とはどういうものか。なぜ危険なのか。放射線によるがん治療を行ってきた著者が、被爆による健康被害についての研究結果を一般向けに解説。
感想=2011.3.11以来、続けている核勉強は果てしがない。ようやく内部被曝に辿り着いた。この、たった100頁足らずの横書きの、写真と図版の多い本を紹介しようとすると、何十行も書かなければならない。ほとんどの頁に付箋をつけてしまった。
いま売れる本は健康関係とレシピ本だと言われる。現に図書館で貸し出される図書は、まさにこの2種に集まっている。今夜のおかずを心込めて作る若いお母さんたちは、今夜だけでなく、孫の孫たちの食卓も想像してみて欲しい。この本を読むと、遠い先の、これから生まれ来る命のために考えようという気持ちが生まれるだろう。年老いた人々に言いたい、明日も知れない命なんだ、先のことなんか知ったことか。などと言わないで地球の命を思いやって頂きたい。
 内部被曝は晩発性の「静かなる殺人」行為だという。東電の作業員たちの被曝がこれである。放射性医薬品を扱う日本メジフィジックス社は、3.11当時、ラディオガルダーゼという薬を緊急輸入、無償提供を申し出た。これはセシウム137の腸管からの吸収を阻害、排泄を促進する薬剤だった。しかし政府は取り合わなかったそうだ。研究開発に240億円をかけたSPEEDIの情報は封印され、報道される数値はでたらめに近かった。政治的意図によって基準値を動かした。「がんばろう、日本」と100万回叫ぶより、真実を一度話すことが重要、と著者は言う。原発プラントの崩壊による実質被害と行政の「判断=無知+故意」が国民に与えた被害は計り知れない。
 当時米国は自国民に対して80km圏内からの逃避命令を出した。西尾先生は、米国は低線量被曝が及ぼす被害の真実を知っていた故の対応だろうと書いている。なぜなら米国は1943年から劣化ウラン弾の研究をしており、1991年にイラク戦争で使った。結果、バスラにおけるがん患者数の増加、先天障害の発生率の上昇を掴んでいた。また、帰還兵士たちの病状も知っていたのである。
国際放射線防護委員会(ICRP)国際原子力機関(IAEA)欧州放射線リスク委員会(ECRR)という3つの国際機関がある。このうちICRPとIAEAは原子力推進派であり、外部被曝のみを扱っている。ベルギーに本部を置く民間団体のECRRだけが慢性被曝・内部被曝も視野に入れている。核開発や原発を担う人たちの要請で基準値を動かした、と言うICRP関係者の証言がでている。日本は、このICRPを土台にした。でたらめの上にでたらめを重ねたのだった。
この原発事故をターニングポイントとして命と生活に関する価値観を問い直そう、と著者はあとがきに書いている。もうじき3.11から4年になる。忘れるな、などという人は甘い。忘れるどころか本腰を入れて考え続けなければならない。価値観を変えるチャンスなのだから。

社会脳からみた認知症

『社会脳からみた認知症』著者=伊古田俊夫(いこたとしお)発行=講談社 ブルーバックス 2014年 新書版 ¥900 238頁 ISBN9784962578899
著者=1949年埼玉県生まれ。北海道大学医学部卒業。勤医協中央病院名誉院長。札幌市認知症支援事業推進医院長など歴任。日本脳神経外科学会専門医。認知症サポート医。
内容=社会脳科学という学問が急速に発達してきている。人が人の気持ちを理解する、他者の心の痛みがわかる、自分の至らなさを反省するというような、たったひとりで生きているのではない、社会の中で生きるために必要とされる社会的な脳の働きを研究している学問である。認知症の人は、こうした社会的な脳の働きが衰える。従来の記憶障害や知的能力の低下だけでは捉えることができなかった患者の心の変化とは、何だったのか? それが社会脳の部分によるものであり、この理解によって、認知症の症状を理解でき、介護者の負担も軽くできる、と説いている。
感想=そうだったのか、と明るい部屋に出たような気がするほど、認知症を理解できた。ただの激しい物忘れではない、知っている人を見て、どうして知らん顔なのか、それは社会脳が次第に衰えるからなのだった。従来の物忘れ病という認識から、社会的認知障害だと見直すことで、認知症患者の、さまざまな奇行の説明がつき、介護者が受けている過酷な精神的ストレスが軽減する。脳内の、どの部位が笑いを司るか、怒りを司るか、などが次々に解明されて、治療につながってゆく。壷猫に紹介したのは、この笑いの章だった。怒りについても興味深い研究結果が紹介されている。いままで残虐極まりない殺人事件に対して、なぜだ、不可解だ、とさまざまな検証がされてきた。ある学者は、指に「水かき」がついている人間がおり、それは水中に生きていた時代の原始的な素質を受け継いでいる特殊人間である。目を覆うような残虐殺人を犯す者は、これである。という仮説を立てていた。しかし最近は、怒るときの脳内の動きを見ると、人によっては、残虐な行為をしているときに快楽を感じる部位が作動していることがわかったという。私の興味は笑いと怒りの章だったが、最後に、認知症早期発見について、予防について、具体的な方法が提示されている。また、認知症の気配が生じた人は、おだやかに、楽しく、前向きな暮らしをすることで、食い止めることができるとも書いてある。叱られたり、怒鳴られたり、なじられたりしていると、どんどん進んでしまうという。90歳を過ぎると50%の人が、95歳を越えると80%の人が認知症になるという調査結果も出ている。認知症にかからないで長生きすることは、並大抵なことではなさそうだ。

青い光に魅せられて

『青い光に魅せられて』副題=青色LED開発物語 著者=赤崎勇 発行=日本経済新聞出版社2013.3 128mmX187mm¥1700 241頁ISBN9784532168513
著者=赤崎勇(あかざきいさむ)1929年鹿児島生まれ。京都大学理学部卒・名城大学教授・名古屋大学特別名誉教授・工学博士・IEEE Edision Medal 等受賞・文化勲章受章 本書はノーベル賞受賞前の出版。

内容=青色LEDの基礎技術を確立させた不屈の研究者。学生時代の生い立ちから戦後の劣悪な環境にもめげずに、一筋に目指す難題に取り組み、世界中の研究者が諦めて見捨てた研究を続けて、夢を実現させていった足取りを語る。
感想=光る半導体をやります。まだやってるの? と言われても動じない。本書を書くに当たって筆者が一番に考えていたことは、一般読者に多少なりとも半導体について、LEDについて分かって貰おうということなのだ、と読みながら感じた。この気持ちが伝わってくるゆえに、分からない私も熱心に図を見つめ、理解しようとしながら読んだ。終章にいたって、60歳過ぎて賞を貰うようになった、自分は賞に関係ない人間だと思っていた、と書いている。ノーベル賞受賞では、ビックリされたことだろう。私生活には全く触れていない。大病をされたようだが、高熱でうなされているときにも天井に論文が見えたという。しかし、その大病の病名はない。わざと書かなかったのか、書き忘れたのだろうか。たぶん、青い光に比べれば、取るに足らぬ事だったのだろう。青い光を求める孤独な旅姿を、我ひとり荒野を行く、と書いている。私は芭蕉を思い出した。この道や行く人なしに秋の暮。

原発事故環境汚染

『原発事故環境汚染』副題=福島第一原発事故の地球科学的側面 編者=中島映至・大原利真・植松光夫・恩田裕一 発行=東京大学出版会出版2014年9月 148mmX210mm 312頁 ISBN9784130603126¥3800
編者=中島映至(なかじまてるゆき)東京大学大気海洋研究所教授・地球表層圏変動研究センター長
   大原利真(おおはらとしまさ)国立環境研究所福島支部準備室研究総括・企画部フェロー
   植松光夫(うえまつみつお) 東京大学大気海洋研究所教授・国際連携研究センター長
   恩田裕一(おんだゆういち) 筑波大学生命環境系教授・アイソトープ環境動態研究センター 副センター長
執筆者 編者を含めて42名 
ほかに用語集・参考文献・索引・執筆者一覧がつく。横書き。
内容=3部構成、全体で11章。1部では、基礎知識と福島原発事故の際の放射性物質の放出量の推定・大気への拡散・全地球への輸送・海洋への拡散・陸域への拡散と沈着について、160頁を費やして記録解説。2部は、防災インフラの整備と課題として、モニタリングシステムの整備・放射性物質の拡散モデリング・除染の3項目を論じている。3部が科学者による緊急の取り組み・福島第一原発事故にかかわる緊急活動とメッセージの2章で、事故の際に人々がどのように動いたか、どうすべきか。科学と社会のありかたの課題について、生の声を記している。
感想=チェルノブイリ・スリーマイルの事故の時は、ひどいことになったと感じたが、現地の様子を山向こうの火事と感じていた。今回は、福島は、東京近辺の住民にとっては、横断歩道を渡ったところ程度の近さと親しさである。私は今迄学んでこなかったことを反省後悔し、片っ端から知識を取り入れてきた。情報源は多種多様であり、量に不足はなかった。しかし、確実な情報となると困難を極めた。
簡単な言い方をすると、それは風評だ、風評被害を受けたと言ううち、どれかは風評どころか事実であり、どれかは風評であり、故意に事実を風評だと言い立てる場合も見つかるのだ。大量の情報は、不信の山でしかなかった。風にそよぐ葦になってはいけない。
本書は、汚染の拡散地図がカラーで示され、図版もわかりやすく、記述がスッキリとしている。つまり不要な形容詞がない。肝心なことを伝えることに徹しているので、頭に入りやすい。終章にいたり、各人の息づかいも聞こえて、親しみ深い最後となった。
「はじめに」にあるように、このような放射性物質による甚大な環境汚染は、経験したことのないもので、手探り状態だったのだ、そしてこの先に長い道のりがあることをいま、一番深刻にとらえている科学者たちがこの本を書いたのだ。浮き石ではない、信頼できるものに出会えた気がしている。

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