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歩行者なのに

歩いて用足しに出かけることが多くなり、次第に歩くことを特別なことに思わなくなってきた。さあ、今日は歩くのだ、と思わずに自然に町の中にいるようになった。交差点で歩行者用の信号が青に変わったので渡ろうとしたとき、右折車が一時停止して私が渡り終えるのを待とうとした。それはタクシーだった。歩行者は私ひとりだったので、すぐさま私はタクシーに合図を送り、先に行くように報せた。タクシーの運転手は手を挙げて挨拶し、走り去った。私は、ゆっくりと横断しようと車道に出た、そのとき2台目の右折車がブレーキの音を立てて急停止した。自家用の小型車だ。運転者は私を睨んで、ボ、ボ、とどもっている。ひどく怒っている。私も怒っていて「危ないわね! 信号を見てよ!」と言った。運転していた高齢の男性は、私に、惚け、と言いたいらしかったが、肩で息をしていた。惚けはどっちだ、と思った。私は、営業車を優先するタチで、相手が緑ナンバーだったら、間に入れるし、右折も優先させるし、つまり仕事の車には敬意を払って運転する。あら、と私は立ち止まって考えた。私は、いま歩いているのではないか。運転しているのではない。右折車を先に通したのは、こっちも車を運転しているつもりになっていたのだ。歩いていることを忘れたのだ、と気がついた。
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