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スズメバチ

市街地を抜けて、やや開けてきた津久井湖のあたりまで走ってきた昨日のこと。空気もせいせいして、暑からず寒からず。1年のうちで気持ちのよいベストスリーに入るだろう季節、窓を全開にして走った。するとほどなく、なにかが運転席側の窓から飛び込んで、私の背中とシートのあいだに挟まってしまった。挟まった物の動く感触が伝わってきた。なにか生き物だ、とすぐにわかった。けっこう大きいのだ。ふと脇見をしたらデニーズがあった。迷わず入る、停める、エンジンを切る、ドアを開ける、そして出て車に背中を映してみた。スズメバチが、背中の真ん中あたりに止まり、お尻を丸くまるめて我が背中を刺そうとしていた。
瞬間、ひらめいたのはアナフラキシーショック。私は札幌で黄色スズメバチ2匹に刺されて入院したことがある。二度と刺されないように、と医師から注意を受けている身の上である。2度目に刺されたら、1時間以内にショック死するかもしれないのである。
このとき、実に不思議なことが起きた。私の左右の腕が背に回り、勢いよくハチを払ったのだ。ハチは飛んで行ってしまった。いったい、どうして腕がうしろに回ったのかしら? いてて、いてて、とつぶやきながら暮らしているのだ、棚の物も取れない痛い腕なのである。腕は、何事もなかったかのように、元通りの、いてて、いてて、腕に戻ってしまった。
私は、極度の緊張のあとに、脱力感に襲われ、呆然とし、目の前のデニーズで盛大に食べてしまった。
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